【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
唇を噛み締めて、泣き声が漏れるのを必死に抑えた。


鼻水が垂れてきて、俯けていた顔を上に向ける。


電話ボックスに自分が映るのが見えた。


真っ暗な景色の中に、ボンヤリと浮かぶ自分。


涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃで、あんた生きてる?そう心の中で呟くほど目に力がなかった。


腐った魚の目ってこういうこと言うんだろうな。


「お父さんはどこにいる…?」


かすれた声で聞いた。


「…何で?」


母親の声は変わらず冷たい。


「死にたいくらい施設出たいから」


当てつけのつもりだった。


あんたのせいで私は今こんな状況なの。


そう伝えたかった。
< 203 / 358 >

この作品をシェア

pagetop