【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
キラキラと光が溢れるリビングで、家族みんなの笑顔の中私はケーキに刺さったローソクの火を吹き消した。


母親が優しい笑顔で


「お誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう」


そう言ってくれた。


私も


「生んでくれてありがとう。私ママの子供で良かった」


そう母親に笑顔で言った。

…母親の顔なんて覚えてもいないのに。


この夢は、ついこの間行った友達の誕生日会での出来事。


すごく羨ましくて、私は親に誕生日を祝ってもらったことがないと初めて気づいた。


普通の家庭はこうなんだ…。


こんな風にみんな笑顔で誕生日を祝うんだ。


なのに私は…。


誕生日すら覚えてくれていなかった母親。


存在すら知らない父親。


生まれてこなきゃ良かったと言われた誕生日。


現実逃避したくて、きっと夢の中だけでも幸せな誕生日を送りたかったんだ。


夢の中だけでは、私は普通の家庭で普通に愛される子供でいたかった。
< 207 / 358 >

この作品をシェア

pagetop