【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
「お、今日雲ねーじゃん」


ふと陽介が空を見上げて言った。


つられるように私も涙を拭いながら空を見上げると、雲一つない真っ青な空がどこまでも広がっている。


「久しぶりにかげおくりやるか」


八重歯をのそがせながらいたずらっぽく笑う。


「お前泣いてる時やるといつも泣き止むし」


「は!?それ幼稚園の頃の話でしょ!?」


なんて口では言ったが、嬉しかった。


日向に出て二人で手をつなぐ。


手をつないた影をじっと見つめながら10数えた。


冷たい風が頬に当たるが、日差しは暖かい。


ゆっくりと眩しい空を見上げると、ぼんやりと白く映る影。


陽介の肩くらいに私の頭がある。


昔と変わらない身長差の影。


いつか、こうやって空に影を送ったら身長差のなくなる時が来るのかな。


来年も再来年も、私が辛い時はこうして励ましてくれるかな。
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