【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
「お前今どこにいんの?」


「施設の近く」


嗚咽まじりの声で答える。


「今からそっち行ってやるから、とりあえず直樹に迎え来てもらえよ」


直樹に…?


「やだ!絶対やだ!陽介来るまで1人で待ってる!」


子供のようにワガママを言う私に、陽介が呆れたような笑い方をした。


「なぁ、足元の影見てみ?」


影?


視線を下に下ろすと、私の前に影はなく後ろを振り向いた。


「はい、じゃあ1~2~3~」


そう数え出す陽介。


「何で影送り?今日雲あるからできないし(笑)」


急に変なことを言い出すから思わず笑ってしまった。


だけど、視線はそのまま影を見つめる。


受話器の向こうで10秒を告げる声が聞こえ、空に目を向けると雲の間の青空に自分の影がぼんやり浮かんだ。
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