【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
「私、今日帰るよ」


ソファーに座りタバコを吸っていた時、そう言った。


寝転んでいた体を半分起こして驚く陽介。


「今日帰らなかったら、ずるずると居座っちゃう気がするんだ」


「…まぁ、確かにな」


「色々ありがとね」


笑ってお礼を言ったが、帰るのはすごく不安だった。


帰ったらどうなるんだろう。


山本なんか怒り狂ってんじゃないの?


…また思い出したりする?


不安なことを考えるとキリがない。


だけど、今帰らないときっとタイミングを逃す。


このまま施設に帰らなかったら、きっといずちゃんは施設を出れなくなっちゃうだろう…。


ちゃんと卒業してからにしなきゃ。


いずちゃんと一緒に施設出るってずっと頑張ってきたのに、今逃げたら裏切ることになる。


それだけじゃない。


逃げたら追いかけられる。


捕まったらきっと救護院行き。


今まで我慢してたことが水の泡になる。
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