【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
陽介のおかげで、私にペナルティが下ることはなかった。


むしろ、山本は少しだけ…ほんの少しだけ優しくなり、怒鳴るのも暴力を振るうのも抑えるようにしてるのは伝わってきた…顔が怒り狂ってたから。


さっちゃんは今まで以上に子供の住みやすい場所にしようと張り切っていた。


たった2日間の家出で施設が少し変わった。


私のおかげだね、と周りの子は笑って言っていたけど、私は何もしてない。


私じゃなくて、陽介が変えてくれたんだ。


小さなことだけど、そんな小さなことが変わるだけで住みやすさは大きく変わる。


「はるかもそうだけど、他にも知ってるヤツ施設にたくさんいるし、出身者としては環境変えてやれるなら変えてやりたいって思うよ」


お礼の電話をした時、陽介がそう言った。


私は、自分がここから出て行くことだけしか考えてなかった。


自分が出て行ったらもう関係ないとさえ思ってた。


陽介の言葉で初めて、施設を出て行った後、施設に残った子たちはどうなっていくんだろうかと考えた。
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