【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
「ねぇ、4年生の遠足の時さっちゃんが煎餅買ってくれたの覚えてる?」


ベンチに座りジュースを飲んでいたさっちゃんの前に近寄り聞いた。


口につけていたペットボトルをゆっくりと離しながら、驚いた表情で私を見上げる。


「あの時の煎餅美味しかったよね」


「はるちゃ…」


さっちゃんが私の名前を呼びながら、眉をハの字に下げる。


隣に腰かけ、空を見上げた。


頭の上には真っ赤なもみじが広がり、あの日のことを思い出す。


「あの日くれたもみじ、どこ行っちゃったかなぁ」


さっちゃんが拾ってくれた綺麗なもみじ。


大切にしようと思ってたのに、いつの間にか忘れてた。


「あの時さっちゃんまだ若かったよね(笑)」


笑って言う私に、さっちゃんは相変わらず眉を下げて見つめるだけ。


いつもはさっちゃんばかりが話しかけてくるのに、今日は逆だね。


なんて心の中で考えながら、懐かしい心地良さを思い出していた。
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