【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
「血出てるよ。痛いでしょ」


いつも優しいけど、今までで1番優しい口調だった。


なぜかその言葉を聞いて、私は心の鍵が外れたようにさっちゃんに抱きついた。


「さっちゃん…私、殺しちゃった…」


絶対誰にも言わないでおこうと決めたこと。


死ぬまで秘密にしておくと誓った過去。


それがずっと私を苦しめていた。


吐き出したくて、忘れたくて、消したくて仕方なかった。


さっちゃんに何で話そうと思ったのか今でもはっきりとは分からない。


だけど、初めて自分のために泣いてくれたから。


死んで当然と思っていた自分を本気で叩いてくれたから。


きっと母親ならこうしてくれるんだ、と思うように優しく頭をなでて抱きしめてくれたから。


親に甘えられなくてずっと強がっていた気持ちが途切れたのかもしれない。
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