【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
「…ちゃん、はるちゃん!」


肩を叩かれ驚いて我に返る。


声のする方を見ると、思い出していた過去よりだいぶ老けたさっちゃんの顔があった。


「本当にあの時はごめんなさい」

頭を深く下げるさっちゃんに、思わず笑った。


「謝らないでってば(笑)だいたいあの後土下座してきたじゃん」


さっちゃんはあの後土下座をして私に謝ってきた。


シカトしたけど。


「正直さ、さっちゃんもう施設に来ないと思ってたんたよね。てか望んでた。…けど、しぶとく居座るし正式な職員になるし、さっちゃん根性あるよね(笑)」


足を組み、丸めていた背中を伸ばしながら言うと、さっちゃんは逆に背中を丸めて小さくなった。


「図々しいのは分かってたけど、それ以外誠意見せる方法思いつかなくて…」


「十分伝わったよ。5年間で私も色々成長してるんだって。さっちゃんの言った通り、辛抱さえ持ってれば生きていけるってことだよね」


さっちゃんがチラッと私を見る。


「今生きてるのは、あの時さっちゃんが強く生きろって言ってくれたからだって思ってる。施設が嫌すぎたけど、その中で学んでプラスになってることもあるし、きっと大人になったらもっと感じると思う」
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