【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
そう思えるまでには本当に時間がかかった。


別にこれと言って何かきっかけがあったワケではない。


あったとするなら、施設を出るって決めて援交を始めたことかもしれない。


気持ち悪いオヤジ相手に体を売る時、いつもさっちゃんの言葉を無意識に唱えてた。


辛抱さえすれば違う場所で生きて行ける、って。


憎む相手はさっちゃんじゃないんだと気づいたのもそのくらいの頃。


大人に近づくにつれて、さっちゃんのしたことは当然のことだったし、妥当と言うか正解だったんだと少しずつ整理していけた。


親の顔も思い出せないくらい小さな頃に捨てられて、周りの施設に比べたら最悪な環境の施設で育った。


幸せだったかと聞かれたらNOと即答できるけど、楽しいこともあって笑って過ごす時間だって多かったのが事実。


もしあの施設にいなかったら…愛情ある親元に産まれていたら、私は胸を張って幸せだと言えたかもしれない。


だけど陽介やいずちゃんに出会えたのはあの施設。
< 319 / 358 >

この作品をシェア

pagetop