【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
太陽の光が反射する海。


それを眺めるように芝生の前に並ぶ大きな四角い石。


いつの間にか定位置になったその場所に腰を落とす。


コンビニの袋からシーチキンのおにぎりを取り出し頬張った。


いつもより霞んで見えるベイブリッジ。


冷たい風が頬に触れ、マフラーを少しきつく巻き直した。


茶色く枯れた葉が、風に飛ばされルーズソックスに当たる。


潰した踵のローファーを脱ぎ、膝を抱えた。


ブレザーをその上にかぶせると、多少温かくなった気がしてくる。


「おはよ!」


おにぎりにかじりついたまま顔を向けると、渓が立っていた。


「いや、コートはまだ早いでしょ(笑)」


紺色のダッフルコートが最初に目に止まり、笑って言う。


「これだと寒いんだって」


両手をグーにし、片方だけ何度か軽く手首を曲げてバイクの運転を表した。
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