【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
渓はポケットからタバコ取出し口にくわえたが、火をつけずに外す。


小さなため息の後、眉を下げた顔を私に向けた。


「…陽介ね、好きな人がいるの」


「好きな人!?」


「好きな人ってか、忘れられない人?」


…ん?何か直樹のことも同じようなこと言ってなかった…?


そんな私に気づいたのか、小さく笑ってタバコに火をつけた。


渓の口から白い息と煙が混じって吐き出されていく。


「直樹が忘れられない人いるんじゃないかなって思ったのは、陽介のこと見てたからってのもあんだ」


「そう…だったんだ…」


それしか言えなかった。


陽介にもそんな人がいたんだ。


それを知りながらも告白したって、渓はどんな気持ちだったんだろう。
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