【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
「はるかは施設出たらどうすんの?」


伊勢佐木モールを歩いていた時、康平が何気なく聞いてきた。


康平に進路の話しを聞かれるのは初めてだった。


…と、言うより私がいつもはぐらかしていただけ…。


「んー…とりあえず今知り合いに働き先ないか聞いてもらってる」


嘘ではない。


施設を出る前に住む場所を確保しなきゃならないので、いずちゃんと話し合ってキャバクラの寮に入ろうとなった。


いずちゃんは、直樹が好きだからもう体は売りたくないと…。


私は別に何の仕事でもよかった。


施設さえ出れるなら、体を売ることになんか抵抗はない。


それは好きな人ができたって変わらない。


キャバクラで生活費が稼げないなら、風俗へ行けばいいや。


そんな甘い考えすら持っていた。


だけど、水商売も風俗も未知の世界。


関内を歩いていてスカウトされたことはあったけど、関内じゃ近すぎてバレる気がした。


…って言うのは言い訳かな。


歌舞伎町へ行きたかった。


あの世界に行ってみたかった。


大人になりたかった。


何も分からない私たちは陽介に頼ることにした。


そんな詳しいことは、康平に言うことができなかった。


反対されるのも分かっていたし、何より、卒業したら康平とは終わるかもしれないなと寂しさがあったから。
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