【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
「そっかー。家遠くなったら寂しいな」


呟くように言った康平は、つないでいた私の手を強く握った。


「そんなしんみりしないでさ、久しぶりに遊んでるんだし楽しもうよ!」


一般入試が終わり、後は合格発表を待つだけ。


受験前は学校で話すくらいしかなかったが、久しぶりに放課後遊ぶことになった。


「だな!!」


そう目尻を下げて笑う康平に、私も笑い返した。


康平ともうすぐ終わる。


そんな予感がすると寂しく思うのは、本当に自分勝手なんだろう。


私が好きなのは直樹だって分かっているのに、ズルズルと付き合い続けているずるい自分。


今まで付き合ってきて、自分から別れを切り出したことは1度もなかった。


告白されて付き合って、振られて終わり。


毎回そうだった。


理由は様々だったけど、たいてい他に好きな人ができたか飽きた。


しかも半年も続いたことがない。


もう少しで康平と付き合って1年なんだと思うと、何で私とそんな長く付き合ってられるのか不思議。


初めて長く付き合ってるから、私を何となくでも理解してくれてる部分はあるから、康平と一緒にいるのが心地いいんだろう。


きっと、心地いいからもうすぐ終わると思うと寂しいんだ…。


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