【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
日が暮れる前、門限に合わせるように施設まで送ってくれた。


いつもなら、少しくらい遅くなっても平気だろと言う康平だったので、意外で驚いた。


「ここの生活も後少しじゃん?大切にしなきゃだよな」


首の後ろに手を当て俯く姿が、少し照れているようにも見える。


「ありがとう」


「ん…今まで門限破らせてばっかでごめんな」


何でだか分からない。


分からないけど、康平の言葉を聞いて込み上げてくる物があった。


施設での生活が残り少ないんだと改めて実感したのか、今まで不満だった部分を謝られたからか。


分からないけれど、泣きたくなるような切なさが込み上げ、私も俯いて気持ちを隠した。
< 340 / 358 >

この作品をシェア

pagetop