【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
無言が圧をかけるように重い。


でも、口を開いたら言い訳しか出てこなそうで俯いたまま黙っていた。


「…好きじゃないのに1年も付き合ってたってこと?」


いつもより低い声。


小さく頷いた。


「俺のことバカにしてたワケ?」


「そうじゃな…」


顔を上げると、康平の冷めた鋭い目が私に向いていた。


言いかけたまま閉じなくなった口。


康平が1歩私に近寄る。


「俺がお前のこと好き好き言ってたの内心笑ってたんじゃねーの?」


そんな風に思ったことはない。


そう頭には浮かぶけれど、見たことない目付きの康平に声が出せなかった。
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