【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
「はるか、おめでとう」


卒業式が終わり、廊下で友達と写真を撮っていた時声をかけられた。


山本だった。


山本は園長と一緒に卒業式に出席したらしく、いつものジャージ姿ではなくピシッと着こなしたスーツ。


その姿だけでも違和感があったのに、優しく笑う山本に顔が引きつるほどの戸惑いを感じた。


周りに人がいるからか。


そうあの時は思ったけど、もしかしたら本心の笑顔だったのかもしれないと今は思ってる。


山本がうちの施設に来たのと、私が施設に来たのは同じ時期。


多分1番長い付き合いなのも私。


施設の送別会の日、山本のくれた言葉は今も覚えてる。


「お前が俺を嫌いだったのは分かってる。長い付き合いで甘えられる存在になったらダメだって思ってたから厳しくしてきたけど、正解だったな」


何が正解なのか全く分からなかった。


本当に嫌いだったし、理不尽な連帯責任ばっかり取らされてムカついてばっかりだった。


施設の門を出ても、山本は私の中で嫌なヤツの印象のまま。
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