【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
『今大通り公園で、昔施設にいた人に会った。送るから早く帰れって言われてるけど、いずちゃん後どのくらいで来れる?』


送信ボタンを押しながら、陽介の顔にチラっと視線を上げるとそれに気づいたのか、私の携帯から私の顔に視線が移る。


「携帯なんだな」


その言葉に、ドキッと焦りを感じた。


当時は携帯よりピッチの方が主流で、料金も断然ピッチの方が安かった。


親からの仕送りもないことを知ってる陽介には、携帯を持つことを許されたのが不思議だったんだろう。


携帯は、学校の先輩の親に買ってもらった。


施設育ちってことに同情してるのか、すごく良くしてくれる人がいた。


だから、施設は私が携帯を持ってることを知らない。
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