HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「―――…それが、久米くん…?」
探るように乃亜が目を上げて、
「誰だよ、久米って」と
一人置いてけぼりの明良兄が眉をしかめた。
「クラスの男子だよ。最近転校してきた。でもそいつが現れてからあたしの周りで不可解なことが起こり始めたんだよね」
「そいつが犯人じゃねぇの?」
明良兄が声を潜めて眉を吊り上げる。
「まだ分かんない。それを探ってるところ」
ため息を吐いてあたしはごろりと上を向いた。
堂々巡りだ。
今はまだ―――久米が何者か分からない。
事件に無関係かもしれないし―――でもそうとは言い切れない気がする。
「もう少し探ってみるよ」
結局そう結論付けて、あたしは起き上がった。
「今はサ、楽しもうよ。あたしは迂闊に水月に近づけないし、ちょっとストレス溜まってんだよね」
「あいつなんかと仲良くするなよ。あのロリコン教師」
明良兄が口を尖らせて、
「なぁに、明良もしかして妬いてるの~?」と乃亜が意地悪く笑った。
「バッ!可愛い妹のこと心配してるだけに決まってンだろ!?」
「ありがと、おにーちゃん♪でも心配しないで?あたしらラブラブだから」
そう言ってやると、「なにっ!」と明良兄がムキッと怒った。
あたしと乃亜は笑い声を上げて、それでもちょっと疲れていたってのもあるから、懐かしいこの雰囲気に―――
心から楽しめたし、安心もできたんだ。