HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「ふわっ……寝ちゃってたみたい~…電話?」
ふわふわ欠伸をしながら乃亜が階段を降りてきた。
あたしは目だけを上げ、乃亜を見ると乃亜は戸惑ったように駆け寄ってきた。
「どうしたの?まさか、ストーカーから電話!?」
あたしはゆっくりとかぶりを振った。
「……じゃ、何…」
乃亜が怪訝そうにあたしを覗き込み、あたしは目を開いたまま乃亜を見つめ返した。
「あたし……知ってる。ミギカドを…」
「……右門…?…ああ、県会議員の?最近選挙カーがうるさいよね」
と乃亜は迷惑そうに眉をしかめ、
それでもあたしは首を横に振った。
「あの県会議員じゃない。でも知ってる―――」
「……どうゆう意味…?」
『ボクの名前、ミギカド アツシ って言うんだ。父親は県会議員をやってる。有名だろ?
君が望めば、何でも手に入れられる』
君ハボクダケノ、オ姫サマダ―――
あたしは思わず口元を覆った。
頭の中にもやが浮かんで、霧がかってる。
ミギカド アツシと名乗った男の顔を―――あたしは思い出せない。
背はどれぐらい?どんな顔をしてる?年齢は―――……
思い出そうとすると、まるで頭痛のような鈍痛があたしの頭を締め付けた。
記憶は曖昧で―――でもその変わった名前を、あたしははっきりと覚えている。
そいつが――
ストーカー………?