HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「――――事情…」
「ホントにはっきりとは知らないし、俺の記憶違いかもしれない。
けど本当は兄貴が居るけど、兄貴は家族と住んでてそいつだけ離れてたみたい」
「…何で明良がそんなこと知ってるの?」
乃亜が探るように目を上げる。
明良兄は軽く肩をすくめて、
「議員の息子ってだけで有名だったし。家が複雑とかで結構話題になってた」と一言。
あたしはディスプレイに顔を戻した。
議員の名前で検索すると、いつくかのワードが引っかかった。
さすが県会議員だけある。爽やかな笑顔の顔写真と、現住所や電話番号なんて言う個人情報がおおっぴろげに掲載させていた。
住所は―――隣の区の、高級住宅街の一角になっている。
そのほかに経歴や個人活動の報告なんかも書かれている。
だけどさすがに家族の情報までは書かれていなかった。
「その右門と会ったっていつだよ?何で?」
明良兄が眉をしかめて、あたしを覗き込む。
「あたしも記憶が曖昧だからはっきり分かんない。だけどあたし右門の息子を知ってる」
「もしかしてそいつがストーカーの犯人!?」
明良兄が勢い込んできたけど、あたしはゆるゆると首を振った。
「まだ分かんない。でもその可能性はある」
あたしの言葉に、乃亜と明良兄が顔を見合わせた。
「でもさすがに家族がどこまで住んでるかなんて、載ってないよ」
乃亜が残念そうにため息を吐き、あたしも同じ思いで俯いた。
だけど
「あ」と乃亜が思い立ったように声を上げて、あたしと明良兄は二人して乃亜を見た。