HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「あの悪魔みたいな女のどこがいいんだかね」
まこは呆れたようにため息を吐いて、肩を竦めた。
自分はこの秋結婚するからなんとでも言えるけどぉ。
まこは一年付き合った千夏さんとめでたくゴールイン。
できちゃった婚だとか。
それでも嬉しそうにしているまこに、「おすそわけして」とばかり、僕は彼の肩に手を置いた。
そのときだった。
「いたいた~神代先生!」
と喫煙スペースを区切ってあるパーテーションから現国の和田先生(♂)がひょっこり顔をのぞかせた。
僕より3つ上の現在28歳。いかにも現国って感じの優しい先生だ。
きさくで、面倒見が良くて生徒たちからも結構人気がある。
「ほらっ。森本~神代先生ここにいるぞ?」と和田先生は後ろに隠れている女生徒を引っ張った。
和田先生の後ろで、俯きかげんの森本 エミナが遠慮がちに顔を上げる。
「どうした?何か相談事?まさか…実行委員やりたくない…とか??」
「実行委員?」とまこが隣から聞いてくる。
「文化祭実行委員だよ。僕のクラスのメンバーは森本と梶田と、久米と………
鬼頭に決まったんだ」
僕の答えに、まこは無言で表情を歪め、
「うゎ!濃!」と和田先生は驚きの表情を作った。
僕だってそのメンバーはどうかなって思ったけど、あのままじゃ埒が明かなかったから。
それに必然的に夜遅くまで学校に残るだろう実行委員になったら、理由もなく彼女を家に送れるし。
なんて考えてる僕…
こんなん教師失格だよね。