HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


「そりゃそのメンバーだったら辞退したくなるな」とまこは意地悪く笑って、煙を口から吐いた。


「いえっ!実行委員はちゃんとやります。最初に手を挙げたのあたしだし…」


と、森本は顔を赤らめて勢い込んだ。


「そっか。良かった」


僕はほっと安堵して、まだ長いタバコを灰皿に捨てた。


久米はともかく、雅と梶田を一緒にすると、何しでかすか分かったもんじゃない。


リーダー格になる生徒がいれば心強い。


「えっと…じゃ、他の用?」僕が聞くと、


「は、はい。あの…実は授業で分からないところがあって」と森本は数学の教科書を開いた。


「ここじゃなんだから、僕の席でいい?」僕は森本を机に促すと、彼女は小さく頷いた。


その様子を黙って見ていたまこは、


「ふぅん」と低くもらして、タバコを灰皿に押し付けた。


「ま、がんばれよ。俺はそろそろ保健室戻るワ」そう言って掌をひらひら振ると、僕に背を向ける。


意味深なその態度が気になったが、


「先生」と森本にせっつかれて、すぐに彼のその様子を忘れた。





< 26 / 841 >

この作品をシェア

pagetop