HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
トイレかどこかに行ってるのかと思って、5分ほど待ってみたけど、乃亜は帰って来る気配がなかった。
十分も経つとさすがに心配になって、あたしはケータイで乃亜に電話を掛けた。
ストーカーの犯人が乃亜に何かしたのじゃないか、と心配で少しばかりケータイを握る手に汗が浮かんだ。
TRRR…『こちらはNTTDocomoです。ただいま電話に出られません…』
と言う虚しい機械音を聞いて、あたしの顔から血の気が引いていった。
ほとんど飛び出すように教室を出ると、あたしはケータイを開いて梶に電話を掛けた。
「梶!乃亜、そこに居る?」
『乃亜ちゃん?居ないけど、どうした?』
「乃亜が居なくなった。まだ校内だと思うから探して!」
『居なくなった!?分かった、見つけたら連絡する』
梶の声も緊張を帯びていた。
乃亜と別行動をすることなんて別に珍しいわけじゃない。
でも帰りはいつも一緒だったし、特にストーカーの存在が知れてからは警戒してなるべく一緒に居るようにしていた。
乃亜に何かあったら―――……
あたしの額に嫌な汗が浮かんだ。