HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「大丈夫。ちょっと久米と喧嘩しちゃって」
「ちょっと喧嘩、って感じじゃなかったぜ?」
まこが呆れたように腕を組む。
「喧嘩だよ。大丈夫、徹底的に叩きのめしてやったから。あたし流のやりかたで」
いつも通りの雅に、僕とまこは思わず顔を合わせた。
まこが、表情を歪めて肩をすくめた。
「鬼頭、楠も落ち着いたばかりだし、今日は送っていくよ」
僕が申し出ると、
「大丈夫。ちょっと歩きながら乃亜から話聞きたいし。
梶も居るし大丈夫だよ。
乃亜は?大丈夫?歩ける?」
楠を覗き込むと、楠は僅かに頷いてゆっくりと立ち上がった。
「うん、大丈夫・・・」
声は弱々しかったものの、しっかりとした足取りだった。
「先生…ご迷惑をお掛けしました」
僕のすぐ目の前でぺこりと頭を下げると、楠は僕の横をすっと通り過ぎた。
雅と梶田が楠を心配そうに見やり、三人一緒に保健室を出て行く。
「一体……何だったんだろうな」
まこが煮え切らない何かを抱えているように、どっかりと椅子に腰を降ろし、ちょっと怪訝そうに扉の向こうを見つめていた。