HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



がくりと項垂れる。


僕は―――ストレスを抱えると、如実に体重に現れる。


食欲が極端に減るからだ。


しかも太りにくい体質ときている。女性のみなさんは羨ましいと思うが、男の僕からしたら、結構なコンプレックス。


ただでさえ、細そうに見えるってのに。


ちなみに僕のベスト体重は55kgほど。


それ以上重くなると体が重く感じるし、それ以上軽くなると体に力が入らなくなる。


これじゃ、いざって言うときに久米と闘えないじゃないか。


いやいや、闘うってどこの西部劇だよ。


決闘なんてこと今時やらないよ。


なんて自分で突っ込むも、それでも恋人がピンチのときはかっこよく助けたいって言うのが男のサガだ。


僕はバスタオル一枚を巻きつけたままの格好で、水を飲むためリビングに向かった。


その後をゆずがとことこついてくる。


キッチンにたどり着くと、コンロに置きっぱなしにした鍋が見えて僕はまたもげんなりと肩を落とした。


鍋の中はカレーだ。カレーが三日も続くと、さすがに食べる気も失せる。


僕は料理があまり…と言うかほとんどダメだから、簡単なカレーなんかを作ったけど…


味気ないカレーよりも、雅の手料理が恋しい。


ため息を吐いてシンクに手を付くと、足元でうろうろしたゆずが、何かをねだるように僕の足を前脚でちょこちょこと引っかいた。


“ねぇ何かちょーだい”


そう笑って見えるのは気のせいだろうか。


僕だってカレー以外のものが食べたいよ。げんなりしてゆずを見上げると、彼女は僕の気持ちに応えたのか


ワンっと小さくないた。



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