HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
僕はゆずをまこに預けると、すぐに服に着替えた。
シャツのボタンを留めながら、「そりゃ、僕はまこみたいに綺麗な筋肉がついてるわけじゃないよ」
とブツブツ。
「って言うか卑怯だよね。医者のくせに、そんなにいい体してさ」
と振り返ると、まこはタバコを吹かせながらも、
「医者だから気をつけてんの。中性脂肪溜め込んでメタボにゃなりたくないんでね。肥満も一種の病気だ」
なんてかっこよく言い切ったケド、医者だったらタバコをまず止めるべきじゃない??
「ストレス発散だ。妊婦の千夏の前じゃ吸えないからな」
「まこはいっつも自由過ぎるほど自由だし、ストレスなんて抱えてないだろ?」
「こう見えても悩みはある」
まこが真剣に目を細めたので、僕はちょっと心配そうに眉を寄せた。
「何……また胃が痛いの?」
ちなみにまこはストレスを抱えると、すぐに胃にくる。
みんなそれぞれ違うんだよなぁ……
「俺の悩み…それは生まれてくる子供の名前をどうしようか悩んでいるところだ」
あっそ。
「まさかノロケに来たんじゃないだろうね。僕だって暇じゃないんだからね」
なんて言ったけど、雅が居なくて寂しかったのは事実。
まこが来てくれて退屈はしなさそうだ。
まこはタバコを灰皿で消し去ると、
「鬼頭は実家だろ?悪いけど今日泊めてくんね?」
と、煙を口から吐き出しながらソファにふんぞりかえった。