HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
まぁ率先してそうゆう学校の行事に取り組む性格ではないけど。
実行委員も久米に半ば強引に誘われたって感じだし。
「先生、おなかが痛いんです。痛くて歩けない。だから送ってって」
雅はさらりと温度のない言葉を出した。
じっと見つめる視線には少しの揺らぎもない。
「え!おなか!?」
慌てて立ち上がると、
「って、乃亜が言ってます」
雅はちらりと楠を見る。話を振られた楠が、
「え!?あたし??」とびっくりしながら目を開けて、そして慌てておなかの辺りを押さえた。
「…そ、そうなんですぅ。おなか痛くて…」
さっきまで元気そうだったのに…今はかなり辛そうだ。苦しげに顔を歪めている。
「そうなのか?じゃぁ送ってくから」僕は慌てて椅子の背もたれに引っ掛けた上着を掴んだ。
「ごめん、森本。そうゆうことで。また後日話聞くから」
「……はい。ありがとうございました。それじゃ」森本はぺこりと一礼すると、まるで逃げるようにその場を立ち去っていった。
上げた顔は曇っていて、一瞬だけ悲しそうな、恨みがましいような複雑な表情を浮かべていた。
「もり…」呼びかけたが森本は素早く職員室を出て行ってしまった。