HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
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それから10分後。
僕が職員専用の駐車場まで急いで向かうと、僕のエスティマの影で雅と楠がおしゃべりをして立っていた。
「あれ?おなかは??」
「先生、雅の嘘にすっかりだまされてー」なんて言って楠が苦笑い。
やっぱ嘘だったんだな…
「何か急に一緒に帰りたくなったから」と言って雅は腕を組みながら、つんと顔を逸らす。
でもその白い頬がほんの少しだけ薄紅色に染まっていた。
「だからって、あたしをダシにしないでよ~」と楠がむくれている。
まぁ、もっともだ。
「だってあの場所であたしがおなか痛いって言ったら怪しまれるに決まってンじゃん」と雅はさらり。
「まぁ、それもそっか」
教師と生徒が交際してるってだけでも大問題なのに、半同棲してるなんて知れたら僕も雅も只じゃ済まされないからな。
どんなことにも慎重になる必要がある…
でも雅が一緒に帰りたい、って言ってくれたことには素直に嬉しい。
僕は後部座席の扉を開けると二人を中に促した。
「どのみち楠は送っていくよ。乗りなさい」
「はぁい♪」楠はご機嫌に言って、「明良のアパートまで宜しくお願いします☆」なんてちゃっかり言ってる。
雅も楠の隣に乗り込んだ。
僕も運転席に乗り込んで、おなかが痛いという設定になっている楠を送るのに最も不自然じゃないフォーメーションだ。
僕はエンジンを掛けた。