HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
ルームミラーの位置を確認するように、ちらりと視線をやると、ミラーの端に
見覚えのある男子生徒の姿が映った。
駐車場の車止めのすぐ後ろにある低い生垣から見えたのは、制服のポケットに手を突っ込んで、まるで観察するように目を細めていたのは…
久米―――……?
僕は振り返ったが、久米の姿はどこにもなかった。
見間違い?
もう一度目を凝らして見たけれど、やっぱり生垣の向こうには誰の姿もない。
後ろの方を気にしている僕に「どうしたの?」と雅が怪訝そうに目を細めていた。
「いや……何でもない」
やっぱり見間違いか…
そんな思いで僕は視線を戻した。
ルームミラーをちょっと直すと、そこに以前雅がつけたスヌーピーの小さなぬいぐるみがぶら下がっていた。
首に色のきれいな花輪を付けたアロハスヌーピー。
これを見つけたまこが前に、
『アロハ、お゛え゛ぇ~(どうやらアロハ・オエと言いたいらしい)』と言って顔を歪めていた。
『汚いよ』僕もちょっと表情を歪めると、
『だって鬼頭が付けたんだろ?あいつがこんな可愛いもん持ってたって想像したら気色悪くなった』
と言ってアロハスヌーピーを指で弾く。
『って言うかあいつが持ってたって聞いたら、急に憎たらしくなった』
と言ってまこは、ぎゅぅとアロハスヌーピーの首を絞めた。