HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「え!あたし!?あたし、不正なんてしてないです!!」
これには流石に乃亜も苛立ったのか、僅かに口調を荒げて石原を睨んだ。
「そうだよ!こいつらは元々頭のデキが違うんだよ!」
梶は本気モードで怒鳴り声を上げる。
「どうだか。色んな噂が出回っているからな」
石原はあたしたちの口ごたえを軽く流して、口の端で陰険に笑うとあたしをちらりと見てきた。
色んな噂―――
暗に、あたしの売春行為を指し示している。ってことにすぐに気付いた。
別に驚くことでもない。A組の生徒が知ってることを教師が気付いていてもおかしくない。
だけど
何なの、こいつ。サイテーだな。
「あたしと乃亜……楠さんは不正なんてしてないですよ?」
制服のポケットに手を突っ込んだまま威嚇するように睨むと、
「じゃあそのUSBの中身を見せてもらおうか」
石原がまたも意地悪く笑い、梶の手から奪うようにUSBを引き抜いた。
石原は何か理由を付けてあたしたちを―――
いや、最初からこいつの標的はあたしだ。
とにかくあたしの落ち度を探りたいみたい。
もちろんそのUSBの中身は試験問題なんて入ってるわけじゃないけど―――
試験問題なんかよりももっと大切で、危険な情報が入っている。
マズい。
あたしの額に汗が浮かんだ。