HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
―――あたしたちは生徒指導室に連れてこられた。
広さは普通の教室の半分ぐらいで、机と椅子が六対ほど。
その固まりの上に石原のノートパソコンが乗っている。
「担任の神代先生を呼んだ。それまで大人しくしているように」
石原はそう言って陰険にちょっとだけ笑った。
あたしたちが何か問題を起こしたら、水月に責任を擦り付けるつもりだ。
厄介者の問題児三人と、その担任を一気に片付けようという作戦がまざまざと分かった。
「なぁ、どうするんだよ」
椅子に座らされて、梶は不安そうに隣からあたしを見てきた。
梶……なんであたしを見るのよ。あたしだってどうしうもできない状況ってのは存在すんだよ。
「こればっかりはどうしようもできない」
問題のUSBは石原が持っている。
下手に奪うと、益々こいつは不審がるだろうし、そうなったら試験問題漏洩は疑われようもない事実に変わる。
あたしたちは間違いなく良くて停学、悪くて退学ってとこだな。
水月はどこかに飛ばされるかもしれない。
数分して水月が慌てたように姿を現せた。
「鬼頭、楠、梶田!」
それぞれの名前を呼んで、横一列に座らされているあたしたちをそれぞれ見る表情は困惑して…だけど緊張に強張っていた。
「早かったですね」
と石原が嫌味を言って水月に笑いかける。
「これが問題のUSBですよ。神代先生も証人になってください」
あたしは水月を見上げた。
水月は緊張した面持ちであたしを見て、
「鬼頭たちは試験問題を盗むような子たちじゃないですよ!」
と、すぐに石原に険のある視線を向けた。