HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
水月がパソコンのUSB接続の差込口にそのメモリを繋げる。
ドキン、ドキン…
と心臓が鳴ったけど、その緊張を悟られないためにあたしはひたすらに画面に集中した。
USBフォルダが展開して、画面が切り替わる。
もうダメだ。
そう確信していたときだった。
画面に“ゆず”の画像がぱっと映った。
え―――……?
あたし以外にも、両隣の梶も乃亜も驚いたように目を開いてる。
最初はゆず一匹で映ってる写真。どこか外だろうか、と思ったがそれは水月のマンションのお散歩コースの一角だとわかった。
上を向いて、わずかに舌を出して相変わらずにっこり笑っているように見える口元。
笑顔って言うのかな、可愛い…
「これは……?」
一緒に画面を覗き込んでいた石原が、怪訝そうに眉をしかめ、その表情をどこか悔しそうだった。
「見て分かんねぇのかよ。犬だよ、犬!」と梶が声を上げ、
「そうそう!雅のおうちの飼い犬のワンちゃん。可愛いでしょ」
と乃亜も早口にまくし立てる。
「雅ったら書くことなかったから犬の自慢?」とわざとらしくあたしを小突いてくる。
「……う、うん…」
曖昧に頷いて水月を見上げると、水月は真剣な視線を寄越してきた、
“何も聞かないで、何も言わないで”とその目は語っていた。
あたしは石原に気付かれないよう、ゆっくりと頷き、再び画面を覗いた。
確認のために画面をスクロールしても、ゆずの写真以外何も出てこなかった。
しかも所々あたしがゆずを抱っこしている写真や、ゆずとじゃれあっている写真があったのが良かった。
中にはあたしがあげた“アフロテディ”を銜えてにっこりご機嫌なゆずも居た。
間違いようもなく“ゆず”はあたしの飼い犬って言う信憑性を石原に植え付けられたみたい。
これが疑いようのない日記だと言うことに石原はようやく納得した。