HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
僕たちの付き合いは真剣で、だけど周囲には隠していること。
だけど何らかの方法で久米がその付き合いを知り、しかも雅に好意を寄せているときている。
彼が僕を挑発して、雅に言い寄って(?)いることを簡潔に話し終えると、和田先生は目を開いたまま僕を凝視していた。
雅がストーカー被害に遭っていると言うこと、言おうか言わないか迷ったが、結局言わないことにして、
まこもそれに関しては何も反応しなかった。
一通り聞き終えると、すっかり冷めてぬるくなったコーヒーを一啜りして、和田先生がおずおずと目を上げた。
あからさまな反対はしてないにしろ、生徒との付き合いにあまり良い感情を持っていないようだ。
何か言われるだろうが、今は彼の言葉を待つしかない。
まるで死刑執行人から刑が下されるのを待つ囚人のような気持ちで、僕は和田先生をドキドキした面持ちで見つめていた。
だけど返ってきた言葉は意外なもので。
「いやぁ、そうだったんですね。神代先生も“男”だったわけだ」
と、コーヒーを飲みながら頷いている。
予想外の言葉に僕だけではなく、まこも少し驚いたように目を開き僕に顔を向けてくる。
「ま、まぁ、僕はこう見えても生物学的にも戸籍上でもオトコですが」
なんて的外れな返事をかえし、その言葉に
「ははっ。相変わらずだなぁ神代先生は」と言って和田先生が楽しそうに笑う。
「鬼頭に何かすると思って怒ったんでしょう?神代先生おっとりしてるから、そう言うことにも動じない人かと思いました」
そう言ってコーヒーを飲み、和田先生はまたも笑顔を浮かべた。
「まぁどんな教師であろうと、その前に一人の人間ですからね。
感情だってあるし、人を好きになったり怒ったりすることは当たり前のことなんじゃないですかね」
おっとりと言って和田先生はカップを見つめた。その目は穏やかだったけれど、カップを持つ手に力が入った気がした。
「ただ……」
和田先生は声を一段と低めて、顔を上げた。