HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「い、いえ!僕は鬼頭との交際を反対してるわけじゃなく、今後気をつけた方がいいと言ってるだけですよ」
慌てて和田先生が手を振る。
僕がゆっくりと顔を上げると、和田先生は話題を逸らすように、
「それにしても結構な力ですね。僕びっくりしちゃいました」
と苦笑いを浮かべる。
「こいつはこう見えて空手の有段者ですよ。かなりの危険人物」
まこが冗談っぽく笑って和田先生を見る。
「え!そうだったんですか!!」
和田先生が慌てたように口元に手を当て、
「僕も神代先生を怒らせないようにしなきゃな~」と漏らした。
イエ……僕はいっつもあんな風に凶暴じゃないですよ……
と心の中で言い訳していると、
「まぁ和田先生も知ってる通り普段は大人しいですよ。教師としての迫力には欠ける」
と、まこがわざと明るく笑うと、和田先生もようやく緊張を解いたように僅かに笑った。
「しかし先生が、鬼頭と……ですか。去年彼女と噂になってたときは、全然違うだろうって思ってましたけど」
和田先生が苦笑を浮かべて僕を見る。
噂になったと言ってもあの時は、まだ雅と付き合ってもいなかった。
当時彼は僕を真剣に庇ってくれて、僕はそれが嬉しかった。
「しかし鬼頭ねぇ」
和田先生は疑わしそうにもう一度口の中で唱える。
「えっと僕と彼女は……不釣合い……ですか?」
僕がおずおずと聞くと、
「いえ、黙ってればお似合いのカップルだと思いますよ?口を開かなきゃ鬼頭はやっぱり美少女で……
でも僕は、まぁあんまり係わり合いがないって言うのもありますが、彼女が何を考えているのかさっぱり分からない」
いえ、それは僕だってよくあります。
僕は心の中で同意した。