HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「どーしたの?雅」とあたしの背後から乃亜が覗き込んでくる。
あたしは慌てて手紙を隠した。
「ううん。何でもない」
「ふぅん。あやしぃ♪」と乃亜はにやりと笑みを浮かべる。
「ラブレター?この浮気ものぉ♪」冗談っぽく笑って、あたしのわき腹をつついてくる。
あたしは曖昧に笑って、その手紙をバッグにねじ込んだ。
カタン……
近くで何かの音がして―――あたしは顔を上げた。
久米が下駄箱の隣に配置してあるステンレス製の傘立てに足を躓かせている。
あたしは目を細めた。
また―――こいつ………?
「あ、鬼頭さんたち今帰り~?」久米はのんびりと笑顔を浮かべている。
「うん。今から帰るとこ」と乃亜が愛想良く答えた。「久米くんも今帰り?」
「帰るとこだったけど、教室に忘れ物しちゃってさ」と久米は苦笑い。
「そーなの?もう戸締りしてると思うよ」
「そっか。じゃぁ鍵は神代先生が持ってるかな。ね、鬼頭さん」とちょっと意味深に笑みを浮かべ首を傾ける久米。
計算してないその無邪気な仕草が女子たちに絶大な人気を誇る理由だろう。
でも、何であたしに聞く…
そう思ったけどあたしは何も答えずに久米に背中を向けた。
久米がストーカーの犯人?
そう思うには安直過ぎるけど、だけどタイミングが良すぎるんだよね―――