HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
昇降口では梶が、少し不安そうに出入り口をちらちらと見てこちらに背を向けていた。
背中も心配を滲ませているのか、僅かに緊張で強張っている。
「梶、お待たせ」
「ああ……うん…てか、どこに行ってたんだよ」
梶が怪訝そうに眉を寄せて、
「うん、ちょっとね」あたしはそれだけ答えて下駄箱の扉を開けた。
梶はそれ以上聞いてはこずに、って言うかそれ以上に緊張して何か疑問を浮かべる前に違う考えが勝っているようだ。
あたしの元に梶が心配そうに顔色を曇らせながら、駆け寄ってくる。
「なぁ、あのUSBに書いてあったこと。あれホントなのかよ」
疑うような口調だったが、表情は心配そうに歪んでいた。
何を指して“ホント”かどうか分からなかったけれど、あそこに書いてあることは全て事実―――…と言うか、あたしにもまだ確信がない部分もあるけど。
「間違いないよ」
そっけなく返して靴を履き替え、
「ね、久米ってもう帰ってる?」と、肝心なことが気に掛かり梶に聞いてみた。
「帰っていったじゃん。お前の読み通り、向こうもかなり焦ってたようだ。
あの様子から察するに、お前の予想は外れてないってことだよな」
真剣な顔をして梶が腕を組み、
それでもあたしは久米が本当に帰っているのかどうか気になって、あいつの靴箱を開けた。
落書きされてないきれいな上履きがきっちり揃えて入っている。
やっぱり、帰ったようだ。
安心しながらちょっと奥を見ると、靴箱の側面に何かが立てかけるように置いてあった。
白い封筒だ。