HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
ラブレターか何かと思って、あたしは靴箱を閉めようとした。
あいつが誰にラブレターを貰おうと興味ないし。
でも―――……ラブレター………?
何だか小さな引っ掛かりを覚えてあたしはその封筒を取り出した。
そっけない白い封筒には宛名が書かれていない。益々ラブレターのように思えなかった。
ひっくり返すと、赤い薔薇のシールが張られていた。
「………」
あたしは目を細めた。
この薔薇のシール…どこかで……
「何だこれ?」
梶もあたしの手元を覗きこんできたときだった。
「あれ?鬼頭さん、今帰り~?」
明るい声がすぐ背後で聞こえて、あたしは慌てて久米の靴箱を乱暴に閉じ、手紙を背後に隠した。
にこにこ笑顔で岩田さんが手を振っている。その横に二人のクラスメイトが居た。
岩田さんか―――…びっくりした…
「あ、うん…今帰り…」
曖昧に返すと、
「今日は文化祭の居残りもないし、うちら今から買い物しようかって思ってるんだけどさ~。鬼頭さんも来る?梶くんも♪」
岩田さんは明るい笑顔であたしたちを眺めて、ご機嫌に手招きしている。あたしたのいつもと違う様子をまるで気にしていないようだった。
「ごめん…あたしたち、ちょっとこれから用があって」
ごまかすように言うと、岩田さんはあまり気にしてないように、
「そっか~残念。じゃ、また今度行こう♪」とにこっと笑いながら、靴箱を開く。
「ありがと。また誘って?」
それだけ言うと、
岩田さんは意外そうに目をぱちぱちさせ、そしてすぐに笑顔を浮かべた。
「うん!絶対ね♪絶対誘うね♪」