HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「―――…そんな」
梶が「信じられない」と言った感じで目を大きく開き、口を開きかけたときだった。
「おい」
明良兄が声を潜めて、あたしのブラウスの袖を引っ張った。
明良兄は向かいのカフェを目配せしている。あたしも梶もそのカフェに目を向けた。
店の半分がオープンテラスになっていて、敷地を囲む洒落たアイアンの柵の前で、制服のポケットに手を突っ込んだ
久米が立っていた。
「…ホントに来た…」
梶が驚きの表情であたしと向かいのカフェを目配せして、一方の明良兄は
「あれが久米……?」
と、確認するようにあたしを真剣に見てきた。
明良兄は久米の姿を見たことがなかったから、制服とそれらしい背格好で聞いてきたに違いないが。
『嘘だと言って欲しい』
明良兄の目はそう語っていた。
「間違いない。久米だよ
罠に掛かった―――」