HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~





《To:乃亜



Sub:お待たせ



今、店に着いた。




    明良》




明良兄が真剣な顔でメールを送る。


あたしはその横で向かいのカフェを睨むようにじっと見据えた。


久米は何かを探しているようにきょろきょろと視線を彷徨わせ、でもその様子は単に待ち合わせ相手を待っているようには思えなかった。


久米―――


言い逃れはできないよ。


あんたがここに来たのが、何よりの証拠。


ついでに言うと、あたしは明良兄にも今あたしたちが居るカフェの存在を報せていないことになってる。


今、久米が立っている店に来るべき人間は―――


本来なら




乃亜、そして明良兄の―――楠兄妹だけだ





乃亜がUSBに書かれた内容を忠実に守って実行してくれたなら




『午後5時。駅前の“Foxed”ってカフェにストーカーの犯人をおびき寄せた


あたしは梶と向かうけど、乃亜は危険だから明良兄に言って二人で来て、絶対よ


           雅』



“Foxed”―――意味は『騙された』




おあつらえ向きの店名じゃない?






< 482 / 841 >

この作品をシェア

pagetop