HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
□Mirror.4
■Mirror.4
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放課後の教室を戸締りしているときだった。
窓が閉まっているかどうかを確認して、ドアに鍵を掛けていると、
「あー!待ってください!」と久米が走ってきた。
「すみません!忘れ物しちゃって」と息を切らしながら久米は膝に手を突いた。
僕は閉めたばかりの鍵をもう一度開けて、久米を教室の中に入れた。
久米は机の中をまさぐって、
「あった~」と言って一冊の手帳みたいなものを取り出し、鞄の中にしまっている。
「もう忘れ物はないか?閉めちゃうけど」僕が鍵をぶら下げると、
「あ、はい。大丈夫です。すみません」と爽やかな笑顔を浮かべて頭を掻く。
そう言えば僕は久米と二人で話したことってあんまりないな。
転校初日に、彼の父親と三人で挨拶を交わしたことはあるけれど。
そう言えば彼の父親も病院関係の仕事に就いてたな……
久米は成績優秀でスポーツ万能。文句のつけどころのない優等生だ。
「久米、さっきはありがとう」僕は笑顔を浮かべて彼を見た。
久米は一瞬何を言っているのか分からないというように首を傾けたが、
「ああ。文化祭の出し物決めるときのこと」と合点がいったように手をぽんと打った。
「見ての通り僕のクラスはまとまりがないから、君みたいなリーダーシップを取れる生徒がいて助かってるよ」
僕は苦笑いを漏らすと、久米はちょっとだけ唇の端を上げて笑った。