HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「ほら、実行員だったら必然的に一緒に作業することが多くなるでしょう?ましてや劇の主役同士なわけだし?
これを機にお近づきになれればいいな―――なんて不純な動機です」
久米と雅―――
僕は二人の姿を思い浮かべ―――それがお似合いであることを知った。
だけど
僕は慌てて頭を振った。彼女は僕の恋人だ。誰にも渡したくない。
「鬼頭はモテるからなぁ。難しいと思うよ?」
僕はちょっと意地悪を言ってしまった。
彼女に手を出すな!とストレートに声を大にして言いたいけれど、それを言ってしまったら終わりだ。
久米はちょっと考えるように腕を組むと
「ですよねぇ」とため息をついた。
「梶田も狙ってる―――?みたいだし、他の男子たちも」
梶田………
雅は梶田を振ったらしいが、それでも梶田は諦めないと彼女に宣言したらしい。
それからも雅に纏わり付いている。男―――と意識するよりも、彼は犬みたいだ。
「ま、俺は俺のペースでがんばりますよ」
そう締めくくると、久米は僕の横を通り過ぎた。
「久米」
僕はその背中に向かって声を掛けていた。