HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「言えよ。ここまできてだんまりなんて往生際悪いぜ?」
保健医はマイペースにワイシャツのポケットからタバコを取り出し、自然な仕草でタバコに火をつける。
「ってかここ禁煙」
そう言ってやると、
「言わなきゃこの家燃やすぞ」保健医はタバコを軽く持ち上げて、にやりと笑った。
この様子からじゃ、本当にやりそうだ。
「黙秘権を行使します。証言は証拠として扱われるので」
軽く手を挙げてぷいと顔を逸らすと、保健医は
キィン
と乾いた金属音を鳴らしてライターの蓋を開けた。
何万もするライターらしい。前に水月が言っていた。
「燃やされていいってことだな」
「先生、医者より犯罪者の方が向いてるんじゃない?燃やしたら千夏さんに言いつけてやる。『あなたの旦那は放火犯です』って
犯罪者の妻なんて肩身狭いよ?千夏さんを不幸にしたくないでしょ」
保健医は小さく舌打ちをしてライターの蓋を閉じた。
「先生の弱みをあたしは知ってるんだからね。
あたしを脅そうとするなんて百万年早い」
「百万年後にもしお前が生きてたら化け物だな。進化して角が生えてるかも。
何せ鬼だからな」
「煩い利己主義者」
「お前は毒女だ。タランチュラめ」
バチバチッ
あたしたちは睨みあって空中で火花を飛ばした。