HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
―――やめた…
何こんな低レベルな言い争いしてんの、あたしたち。
どうせあたしの嘘をこいつに見破られてるわけだし、今更隠しても体力と時間の無駄だ。
あたしは吐息をつくと諦めて、こいつにさっきの店に言ったいきさつや、その後何があったのかを話した。
「はぁ?ストーカー野郎をおびき寄せて罠にはめようとした?」
一通り聞き終わると、保健医は顔を歪めて声を上げた。
「何でそんな危険なことしたんだよ!って聞く方が間違ってるか。
お前行動力あるしな」
保健医は呆れたように煙を吐き出し、あたしが用意したコーヒーの空き缶に灰を落とし入れた。
「梶が車に轢かれるかと思って、あのときは本当に怖かった」
今でもその瞬間を思い出すと、恐怖で両手が震える。
梶が無事で―――……本当に良かった。
「ストーカー野郎は容赦なくあたしの大切なものを奪おうとしてる」
「だから引き離した?水月も、梶田も―――俺も……?」
保健医はさっき吸ったばかりだと言うのに、早くも二本目を口にして火を点けている。
あたしはその問いに答えなかった。
ただ俯いて足元をじっと見ていると、保健医はまたも呆れたように煙を吐き出して、
「水月も梶田もショック受けてたようだったぜ?
俺はまぁ、あいつらとはお前に抱く感情が違うから、あいつらより幾分冷静に見れたけどな」
「……うん」
あたしは俯いたまま何とか答えた。
あたしは水月も梶も―――二人を酷いやり方で傷つけた。
でも、それしか方法が―――なかった。