HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「んで?この先どうするよ」
保健医に聞かれてあたしは下を向いたまま瞬きをした。
「まだ具体的には考えてない。久米に聞かなきゃいけないこともあるし。
とりあえずあいつが隠してること聞き出す」
「それってあいつと付き合うってことか?」
そう聞かれてあたしはそこでようやく顔を上げた。
「まぁ俺はフリだと思ってるけどな。でも水月や梶田はまたショック受けるだろうな。
俺としては梶田はどうでもいいとこだが。
男ってのは大概女より弱い生き物なんだ。
水月、あいつまた痩せて眠れなくなるんだろうなぁ。お前と離れてるだけで5キロも痩せたって言ってたから、このまま行けば骨と皮だけのミイラになっちまうよなぁ。
ミイラ水月だ」
保健医はわざとらしく言って、あたしを眺めてきた。
「ってかミーラ水月って、言葉だけ聞くと可愛いし。なんか占い師みたいじゃない?」
あたしが思わず本音を言うと、保健医は頬を緩ませた。
そしてあたしの頭にそっと腕を伸ばしてくる。
「あいつらも辛いと思うが、そう決断したお前が一番辛いんだろうな」
保健医の纏った香りがすぐ近くで香って、その大きな手があたしの頭をそっと撫でた。
「大丈夫、水月は俺が見てるから。ってかあの男、俺の手を必要としなくても、ああ見えて結構芯が強いんだぜ?
たぶんミイラも素手で触れるぐらいな。俺は無理だけどな」
「さすがにあたしも無理だよ。
先生、水月がミイラになっちゃわないように、ついててあげてね」
あたしがほんの少しだけ笑うと、保健医も笑顔を返してくれた。