HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
―――
―
「今日はお前も疲れたろ?もう寝ろ。俺はここに居るから」
保健医はそう言ってあたしを鬱陶しそうに手で払った。
「先生まさか、ここに泊まってくつもり?」
あたしが表情を歪めると、
「何だよ、昨日今日の仲じゃねぇだろ?ってか、かつては一緒にベッドで寝た仲じゃねぇか」
と意味深ににやりと笑う。
「一緒に寝たダケだよ。先生は寝言で『千夏、千夏~』って煩かった。あたし、寝れなかった」
「言ってねぇよ」
うん、ホントは言ってなかった。
いびきもかかないし寝相もいい。ついでに寝起きも悪くない。
「先生寝てた方がいい男だよ?(大人しくて)」
そう言ってやると、
「俺は起きててもいい男なの」と保健医が口を尖らせながらメガネを取り、ソファに脚を投げ出した。
保健医のムカつくほど長い脚は、三人掛けのソファに収まりきらず、脚の先が飛び出ている。
「お前こそ早く寝ろ」
「分かったよ」
あたしの家なのに何故か追い出されるように、あたしはリビングを後にしようとした。
そのときだった。
「鬼頭。一人で闘おうとするな。
俺は水月にお前の考えを黙ってるつもりだ。お前が必死に守ったものを、あっさりと敵に手放さない。
だけどお前は一人じゃない。
俺たちは
戦友だ」
ソファに横たわったままの姿勢で、保健医は目を閉じて
あたしに語りかけてきた。