HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
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どこだろう、ここは……
自分の部屋ではないことだけは分かった。そして、その視界に映る光景がどこか教室のように思えた。
立ち並ぶ机と椅子。黒板にチョーク。大きな窓には白いカーテンがはためいている。
教室なんてどこも似たような光景だけど、だけど僕が受け持つクラスではないことが分かった。
遠くで雅の姿がぼんやりと見える。
彼女は大きな窓の外をぼんやりと眺めて、その手前の机に腰掛けていた。
見慣れない制服姿だった。高校の制服ではない。
白い半袖のブラウスの襟元には赤くて細いリボンが結ばれていて、紺色のプリーツスカート。
顔も―――今よりちょっとだけ幼い。
「雅―――……?」
僕は彼女に呼びかけると、雅は相変わらずの無表情で僕を―――
いや、僕の向こう側に目を向けた。
雅が赤い唇を僅かに開けて、何かを話しかける。
だけどその声は聞こえなかった。
「え…?何……?」
そう返したが、彼女は僕の問いかけに反応せず、こちらに歩いてきた。
すれ違い様に二、三言葉を出し……そして教室を出て行ってしまった。
僕は慌てて彼女の後を追ったが―――扉から外へは出られなかった。
彼女の姿はどんどん遠ざかる。
待って、いかないで―――
必死に呼びかけると。
“ボクの雅―――”
どこからか声が響いてきた。