HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


―――


部屋に入ると、あたしは鞄を乱暴に床に放り投げた。


そのままベッドにダイブ。


疲れた……


シャワー浴びたいのに、ベッドに横になるとその気力も薄らぐ。


ぐったりとうつぶせになって腕を床に垂らすと、指の先がケータイに触れた。


何となくそのままの姿勢でケータイを手繰り寄せ、手に取って開くと、


メール受信と着信があった。


着信は乃亜と明良兄で、


メールの方は見慣れない数字やアルファべットの羅列のアドレス。


あたしは目を細めてメールを開き、






“無事だったみたいだね。君が警察官に連れられて立ち去るまで見てたよ。


ボクの雅。無事で良かった。


ボクを追いかけてきたあの男。あの男を仕留められなかったのは残念だが、次はないよ。



大丈夫、ボクは君を愛してるんだ。


君を傷つけたりはしない。



君は―――ね”





その一文を読んで目を開いた。


ストーカー野郎。あいつもとっとと逃げたってワケか。




何が“ボクの雅”だよ。




あたしはあんたのものじゃない。


イライラとケータイを閉じようとして、ディスプレイに目がいった。


留守録メッセージの表示が出ている。


一瞬、ストーカー野郎かと思ったけど、着信を確認すると“非通知”や見知らぬ番号はなかった。


時間的に見ても






“乃亜”―――だ。






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