HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



体も頭も疲れ切ってるのに、眠って体力を回復しなければいけないのに、


眠気は一向にやってこなかった。


睡眠不足と疲労で頭が重い。生理痛でおなかや腰も痛むし。


全身だるくて、あたしは気分を入れ替えるようにシャワーを浴びた。


サー…


昨日の雨を思いだせるシャワーの音がバスルームに響いて、あたしは顔を覆った。


学校…


行かなきゃいけないのに、行きたくない。


水月の姿を見たいのに、視界に入れたくない。


きっと見たら―――あたし……


泣き出しちゃうかもしれないから。


何もかもぶちまけて、あの手に縋りたくなるから―――





でもそれだけはダメ




あたしは決めたんだ




あたしの大切なものをこの手で守るって。






キュッ


シャワーのノズルを締め、あたしは顔を上げた。


鏡に目を向けると、もう一人のあたしが鏡に映っていた。


鏡の中のあたしは、赤い唇に笑みを浮かべると、





『だから言ったじゃない。あんたは大切なことを忘れてるって。早く思い出さないと手遅れになるって。


あたしは忠告したはずだよ?』




とにやりと笑い、あたしに言葉を投げかけてきた。






< 553 / 841 >

この作品をシェア

pagetop