HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
慌てて振り向くが、背後には誰も居ない。教室の出入り口が見えるだけだ。
後ろの方にはロッカーが備え付けてある。
夢だと認識しているのに、その光景はどこかリアルだった。
“雅、愛してるよ。君は永遠にボクのもの”
どこからともなく響いてくる声は男のものだ。
声変わりをする前の少年のもののように―――聞こえた。
ぞくりと背中を嫌な汗が伝い落ちる。
「誰だ」
僕はあちこちに視線を巡らせたが、がらんとした教室には誰も居なかった。
“君を誰にも渡さない。
誰にも―――
君はボクの永遠の花嫁だ―――
雅”
愛してる
愛してる
愛してる―――
誰かの感情が流れ込んできて、僕の夢を支配する。
視界が歪み、奇妙な渦を描いて暗転した。
誰―――!!
―――ガチャンっ!
何かが割れる激しい音がして、僕は目を開いた。